在るがままの存在
煌々と輝く蛍光灯の下、困った表情をする2人と
眉間に皺を寄せている人物2人を見ながら、
心の中で溜め息を付いた。
重い空気を作ってしまった原因は自分・・・
手塚に抱かれ、楽しげに話し合う中、を見た視線が不思議そうに手塚を見た後、
交互に視線が動き、3人で見つめ、再び、手塚へと視線を移せば、
低い音が言葉を作り上げた。
2人で池を見ていたら、の頭に耳が生えている事に気が付いた事。
ソレには神経があって、自身が自在に動かせる事。
耳の後、尻尾もある事に気付き、暫くした後、
猫の姿になってしまった。
理由は本人も解らず、説明も、変わりに手塚が行った。
重い空気と居ずらさが、気持ちを落とし、
ココにお世話になれば、手塚くんだけではなく、
皆さんにも迷惑をかけてしまう・・・
居ない方が・・・
出た方が良いんしゃないか・・・・
同じ言葉が頭の中をグルグルと回り、その答が正しいのだと思い始める。
夜・・皆が寝たのを見て家を出よう。
心が決まり、決心が付いた。
音の無い中、布が擦れる音が耳に入った後、
「男に二言は無い。
お前さんも出ていくなど考えるでないぞ」
力強く告げられた言葉が耳に入り、意味を理解をし、声の主を見れば、
深く頷かれ、言葉と動きの力強さに涙が出そうになった。
次々に出てくる感情に返す言葉が声にならず、涙の溜まる
瞼をごまかす様に、数回瞬きを繰り返す。
面倒になる事も、厄介な事になる事も解っているにも関わらず、
居場所を与えてくれる。
なんて、優しい人なんだろう・・・
人の優しさがこんなに嬉しい事だなんて知らなかった。
「ありがとうございます」
振るえる声、
涙を溜めたままの目で笑い礼を告げれば、
「問題も解決した事ですし、
時間も時間ですから夕食支度をしますね」
変わらぬ優しげな声に頷き、手伝いでも・・と、
足を動かすが、手から伝わる固い感触に今の自分の姿を思い出し、
上げた腰を下ろし、手を目の前まで上げ握ったり、開いたりと繰り返す。
猫かぁ・・・・
不便だなぁ
肉球の感触を確かめながら手を見つめれば、手塚の視線を感じ、
首を捻った。
なんだろう?
また、何かヘンな事してたとか!!
まさか・・・
黒猫だから不吉とか!?
ど・・どうしよう・・・
色まで気が付かなかったよ。
黒猫を見たら3歩下がれ。
て、言われるぐらいだもんね!
ハッ!
マスクを付けて斧を持った大男が来ちゃう!
ヤダ!
どうしよう!!
両頬に手の平を付け、浮かぶ考えるにオロオロとする。
どうして色指定が出来ないのよぅ!
髪が黒だからって黒猫にする事ないじゃない!!
なに色の毛並みになりたいか本人に聞きに聞きなさいよ!
気が効かないヤツねぇ
不安が怒りに擦り変わり、身も知らないダレかに八つ当たりをしだす。
まったく・・・
溜め息に怒りを混ぜ外に出せば、頭をなぜられた。
ゆっくりと優しくなぜられ、今までの怒りが無くなり、心が空っぽになった。
優しく髪をなぜなれ、気持ち良さに目を閉じ手塚に身を任せていれば、
ゴロゴロとノドが鳴る。
コレじゃあ、気持ち良いと思っている事バレるじゃない!
顔が熱くなるのが解り、両手で頭を抱えた。
ああ、もう!
気持ちが隠せないなんて!
絶対、手塚くんヘンだと思ったハズ。
恥ずかしい!
両手で目を塞ぎ、首を振るが、勢いが良すぎたのか
視界が揺れる感覚に額を押さえ疼くまる。
気持ち・・悪い・・・
揺れの残る感覚に耐える様にギュっと手と足に力を入れ
爪が食い込むのではないかと思うが、
背中をなぜる大きな手を感じた後、
脇に手を入れられテーブルから離され。
な・・なに!?
文字通り、手足が地面に着いていない状態に驚き声を上げかけるが、
直ぐさま肉球に柔らかな感触に、ホッと息を吐き腰を下ろす為
バランスが良い場所をくるくる回って捜す。
ココが良いかな・・?
気を抜けば滑り落ちそうになる場所にどうにか
腰を下ろせば目の前に、テーブルの裏が見えた。
テーブル?
不思議に思い首を動かし見える風景を変えていけば、
黒髪が見え、腰を捻れば背中の方を見れば手塚の顔が合った。
手塚くん?
後ろに手塚が居る事に疑問を持ち、
改めて周りを見渡せば、ゆっくりと情報が頭に入って来た。
机の上から降ろされて、手塚くんの膝の上に座ってるのか。
なるほど。
理解し納得したが、
手塚くんの・・・膝の上?
頷きかけた答に疑問を持ち3度目の現状確認を行った。
なぜワタシは手塚氏の膝の上に座ってるのでしようか・・・・
動かなくなってしまった脳と身体に心が焦りだし、
な・・なにが、どうなってるの!?
冷や汗が背を伝う感触に生唾を飲み込んだ。
私は幻覚を見ているのでしようか・・・
何度瞬きを繰り返しても、現状は変わらず、冷や汗ばかりが流れる中、
赤いモノが目に入り、好奇心に釣られ鼻を近付ければ
サカナだ!
モノが解った瞬間、目に光りが戻り、尻尾がゆれる。
ゆっくりと手を伸ばし、両手で持ち上げ口へと運べば、
やっぱりサカナは生が1番よね!
幸せな気分になり、うっとりと食べればアッと言う間に無くなり、
上がった気持ちは落ちていった。
無くなっちゃった・・・
悲しい気持ちになり、耳を下げ視線落とせば、
新しいサカナが目の前に置かれ再び両手で掴み口へと運ぶ。
美味しい
浮上する気持ちに耳が立ち尻尾が揺れる。
無くなれば差し出されと数回繰り返されフッと疑問が浮かぶ。
手塚くんて、動物と人を分ける人だと思ってた・・・
膝の上に座りもぐもぐと刺身を食べながら、上にある手塚の顔を見上げた。
真剣な表情で箸を動かす姿に手を止め、
視線を感じたのか下を向きと目を合わせ、
「どうした?」
降って来た言葉に、
「なんでも・・ないです・・・」
首を振り言葉を返せば、
「そうか」
頷き、止めていた箸を動かした。
ぼんやりと動く箸を眺めながら、手に持っている刺身を食べ、
手塚くんの膝の上に座り、手の平に乗せられたサカナを貰う。
コレって凄い事なんじゃないかな・・・
なにげに凭れていたりするのだか、文句を言うそぶりは無い。
アノ手塚くんにねぇ・・・
見るだけでしか獲られなかった情報を自分の中で
想像し勝手に解ったつもりでいた。
想像と言うより妄想に近いんだけどね・・・
貰ったサカナを食べ、考え事をしていればイスを引く音が耳に入り足元を見れば、
お爺さんが立ち上がり続いて国春さんが立ち上がり、
どうすれば良いのか解らず手塚の顔を見上げれば、頭をなぜられ、
膝から降りれば、手塚もイスから立ち食器手に持ちキッチンへと入って行く。
手伝いをするんだ・・
優しいなぁ。
動く足にピッタリと付いていく。
「ありがとう、国光」
柔らかく微笑み、
「お風呂入ってるわよ」
「有難うございます」
他人行儀に感じてしまう言葉の作りでも、
何かが違うらしく笑みを深くした表情を眺め、
歩き出した手塚の後を追い共に部屋へと入っていく。
きれいな部屋だなぁ・・
乱れ1つない部屋を見回し壁に光る物を見つけ近付いてみる。
なんだろう?
蛍光灯の光りに反射しキラキラした物に心が惹かれ、
ベットに飛び乗りじっくりと眺めた。
さかな?
小さな魚の形をし、所々に釣り針が付いた物が並べられていた。
「珍しいか?」
額縁に肉球を付け視線を外さず頷けば、
「ルアーと言って魚を釣る時に使う物だ」
「これ、全部そうなの?」
「ああ」
「へぇ〜」
硝子越しに映る手塚の顔を眺め続ける。
趣味は釣りて、書いてあった気がする・・・
頭の中にある情報を引き出し、心の中で頷き、
で、山の写真が貼ってあると・・・
視線を動かせば、立派とも言えるマッターホルンの写真が貼ってあった。
制覇したんだっけ・・・
書かれた文字を読んだ時、
どんな小学生だ!
なんて思ったっけ。
思い出に耽っていれば、
「」
名前を呼ばれ意識を戻し視線を合わせれば、
「しばらく好きにしていてくれ」
頷きで返事を返せば、に背を向け机へと向かった。
聞こえてくるのは紙に何かを書く音。
何をしてるんだろ?
ベットから飛び降り、手塚の足元に座り見上げてみるが横顔しか見えず、
身体のバネを使い手塚の膝へと飛び乗り、机の上を見れば、
開かれた教科書にノートがあった。
宿題かな?
それとも予習?
偉いなぁ・・・・
止まってしまった手を動かし、白いノートを黒に変えていく。
字は態を表す、か・・・・
昔の人は上手いこと言うよなぁ・・・
乱れも無い字を見つめ、動いていくシャーペンを眼で追っていく。
全ての欄が埋まればページを捲り、新しい欄に書いてゆく。
繰り返す中、変わっていくのは教科書。
数学に英語
古文に歴史
次々に変わってく教科書に、眼が回りだしてきた。
自分が勉強をしている訳じゃないのに、
何だろう?
この疲労感・・・
テスト前でも、こんなに勉強しないよ、私!
偏頭痛までし始めていた脳は見る事を拒否をし始め、
机から手を離し、体を丸め目を休めると言う自分勝手な理由を付け
眼を閉じた。
お腹から感じる人肌は心地良さを感じ、
すぐさま眠りへと意識を離す。
心地良い闇の中、大きな手が体を撫ぜる感覚に
尻尾を揺らし、一段と深い闇へと入って行く。
人肌の優しさ、文字を書く音。
心地良さのピースが1つ無くなり、代わりに
「」
安心感を感じる音が聞こえた。
「?」
身体を撫ぜていた大きな手が、今度は頭を撫ぜた。
気持ちよくて、覚醒しかける意識を止め、
ふわふわとするモノに身を任せる。
名前を呼ばれ、眼を開けなければならないのだが
ふわふわとした心地良に笑みを零していれば、
溜め息を付く音が聞こえ、慌て目を開け身体を動かす。
「起きたか?」
「手塚くん?」
怒らしてしまったのでは?
恐る恐る手塚の表情を眺めれば、
変わらぬ表情で、自己判断が出来なかった。
「風呂に入るが、も入るか?」
淡々と紡がれる言葉に、
「いいの?」
怖々聞き返せば
「ああ」
是と頷きが返る。
「入りたいな」
無言で頷き、を抱き上げ部屋を出て風呂場へと入って行く。
視界が白くなるほどの湯気で毛が湿りだし、
身体が重くなるのを感じ、手でヒゲをなぜてみる。
猫が雨の日に怠そうにしてる気持ちが良く分かたよ。
後、お風呂を嫌がる気持ちも良く分かった。
湿気に怠さをにげんなりしている中、
桶にお湯を汲み、ゆっくりとを下ろした。
「熱くないか?」
「うん。気持ち良いよ」
全身、お湯に浸かってしまえば怠さも体の重さも無くなり、
代わりにヒノキの匂いが気持ち良さを感じさせる。
気持ち良いなぁ〜
眠っていた時とは違う心地良さに、
思わずうっとりしてしまう。
「国光」
幸せ気分に浸る中、優しげな声に目を開ければ
彩菜の姿が見え、手塚に何かを話した後、
微笑ましそうに笑みを浮かべ風呂場から姿を消した。
なんだったんだろう?
首を傾げ、手塚を眺めていれば、
「」
名を呼ばれ、
「体を洗うから出てくれ」
言われた言葉が理解出来ず、手塚を見つめてれば
手が延ばされ桶から抱き出されてしまった。
え?
なに?
手塚の行動が解らず、思考が動かず
パニックになり手足を動かし暴れてみる。
「離してぇ〜」
「落ち着け」
手足を動かしているため水が飛び散り、手塚を濡らしていくが、
お構いなしに暴れていく。
「体を洗うだけだ」
を抱いている手に力を込められ痛みを感じ、
ようやく冷静になり始めてきた。
「て・・手塚くん?」
動かしていた手足を止め、視線を合わせてみれば、
眉間に皺を寄せ髪からは水が滴り落ちていた。
「ごめんなさい・・・」
自分がやってしまった事に罪悪感が溢れ、
涙声になりながら謝りを入れれば、
「いや・・・」
頬から落ちる滴を手の甲で拭い、を床に下ろした。
「体を洗うから動かないでくれ」
肉球から伝わる冷たさに
頭が冷やされ、手塚の言葉もすんなりと入ってくる。
が、
「え!?
いいよ。一人で洗えるから大丈夫!」
驚き、慌て首を振り拒否するが、
「・・」
低くした声で名前を呼ばれるが、
「一人で大丈夫。頭だって顔だって洗えるし」
ね!
笑顔で押してみるが、
「背中はどうする気だ」
「それは・・・」
返された言葉に返せず、口ごもってしまえば、
「大人しくしてろ」
言葉一つでの動きを止め、
いつの間にか持っていたシャンプーを手の平から
の体に塗り洗っていく。
背中を洗い、腕に足。
次に尻尾を洗われる中、
手塚くんの中では私は人じゃなくて、
猫で覚えられているんじゃ・・・
「頭を洗うから目を閉じていろ」
頷き、目を閉じれば、
ゆっくりとなぜられ、ぎこちない手つきで頭を洗い始めた。
恐る恐ると感じる手の動きに、
あの手塚氏が戸惑っていらっしゃる!
真っ暗な視界の中、伝わってくるモノに驚くも、
まぁ、手塚氏も戸惑う事もあるよね・・・
頷き、洗われるままでいれば、
「流すぞ」
聞こえた言葉にギュッと目を閉じた。
ゆっくりと流れるお湯と手塚の手に寄って泡が流され、
ホッと息を付くが トリートメントにドライヤまで行われ、
精神的に疲れがやってきて座り込んだ。
疲れた・・・
ぐったりと壁に凭れ目を閉じ、開けたら手塚のベットの上にいた。
いつの間に!?
驚き、当たりを見渡せば
真っ暗で、目を懲らしてみれば隣に手塚がおり、
寝息を立てていた。
「な!!!」
声を上げかけ、慌て両手で口を塞いだ。
まじまじと見つめ、2度目の驚きを味わった後、
心の中で絶叫する。
手塚氏のパジャマ姿!!
なんと言いますか・・
アレですよね!
ソウ・・コレはアレだ!
忘れられない衝撃て良く聞くけど、ソレがコレか・・・
肩で息を落とし、横になり目を閉じた。
そういやぁ・・この肩までかかってる布団、誰がかけてくれ・・・・
ダメだ!
ダレかは解るけど・・
声い出して言えない!
ドキドキと早鐘の様に打つ心臓を無理やり沈め、布団に潜り込み、
色んな意味に寝る事が出来なさそうだけど・・・・